This Boy

26歳のリアル

池袋のソープ嬢に「単純明快お悩み相談」をして頂いた話。

 

もうあの日から二年が経つ。

 

あの朝、僕は疲れていた。

 

 

青春コンプレックスを引きずったまま大人になってしまった僕は相変わらず女性を追いかけることだけに囚われていた。モテたい。というより、モテなければいけない。もはや病気だ。

 

その日もクラブに行ったが、全くと言っていいほどダメだった。声を掛けた女性とは会話が弾まず、「なにをしに来たんだろう」状態が最後まで続いた。

 

僕は物事を極端に考えてしまう悪い癖がある。

 

調子がいいときはとことん躁状態になる。

逆に悪いときはとことん鬱っぽくなる。

 

しかも、その理由のほとんどはくだらないことだ。

 

「もうダメだ。」

 

なにがダメなのかと言われればよくわからない。

 

たかが、「その日はいい出会いがなかった。」そう考えることさえできればそれで済む話だ。実にくだらない。

 

ただ、モテたいと切に願いそのことだけを考え他になにも考えてこなかった僕にとっては死活問題であった。

 

 

 

早朝6時にクラブを諦めて(&色んなことを諦めて)、街をぶらつく。

 

池袋に向かった。

 

 

ホテルヘルスの受付で雑に並べられた写真を凝視する。

 

この時だけは躁も鬱もない。

 

ホテルで待つこと約20分。

 

やってきたのは、「かわいい子」ではなかった。(失礼な話だが笑)

 

お金を払う。1万7千円。

 

日曜日の池袋の街を歩きながら、思う。

 

「つまんねーな。」

 

 

この日は満たされない気持ちがなかなか収まらなかった。

 

時間は昼をまわっていた。

 

「もう一回、お店に行こう。」

 

どこまで、堕ちることができるか見てみたくなった。(風俗=負の象徴とは思ってないが。)

 

 

 

現れたのは童顔で35歳のまあまあ綺麗な女性だった。(三浦理恵子風)

 

とても気さくなかんじでプレイも申し分なかった。

 

すべてが終わった後、ここでしか聞けない質問をしてみた。

 

あまりにくだらなく、それでいて真剣な悩みを。

 

 

「僕は自分と絶対に合わない人を好きになってしまう。」

 

 

 

 

つまり、

 

 

第一印象で「めっちゃ可愛い」と思う人とはたいてい話が合わない。

 

逆にそうでもない人は、自然体で会話ができ話も合う。

 

大学のサークルのノリ、クラブでテキーラを一気飲み、何が楽しいかわからない。

 

だけど、自分が好きな子はなんとなくだけどその中にいる気がしてしまう。

 

 

僕の超寒い質問を真剣な目をしながら黙って聞いてくれた嬢が口を開いた。

 

 

 

「自分と合う人で超かわいい子なんて絶対いるよ。」

 

 

 

 

「あなたがつまらないと思うことを一緒に私もつまらないと言ってくれる子。あなたが楽しいと思うことを私も楽しいと本気で言ってくれる子が運命の人なんじゃないの。」

 

 

「めっちゃ可愛くて、そういうふうになれる子なんて絶対いるよ。」

 

 

彼女は僕の低レベルな質問に真剣な目で淡々と答えてくれた。

 

 

さすがプロだ。

 

 

僕は不幸せを自ら選んでいたのかもしれない。

 

 

 

サザエさんで例えてみる。花沢さんはカツオに好感を持っている。(カツオは持っていない。)カツオが好感を持っているかおりちゃんは少し手の届かないところにいる。

 

 

 

でも現実は花沢さんもかおりちゃんもないのだ。

 

 

「自分と合う、超かわいい子を見つけよう。」

 

 

 

 

 

 

くだらないことでも、口に出して言ってみると時に思わぬ発見がある。

 

変な思い込みからすっと抜けることができる。

 

 

 

沈みかけた夕陽が池袋の街を差していた。